【祈りの美 ⑥】清水公照 鶴の図 「線の交錯」鮮やかに
作者は「泥仏」から派生した釈迦や十大弟子、羅漢といった伝統的な宗教画題とされるものから、還暦(60歳)を契機に始めた「絵日記」に登場するような四季折々の風物を主題としたものまでさまざまな画題で絵を描いています。軽妙な筆さばきを見せる「鶴図」も作者おなじみの主題の一つです。
墨のにじみや濃淡を利用した「付け立て」と呼ばれる運筆技法を生かして鶴を表現していますが、作者はこれを「線の交錯」と捉えて、筆ならしのために頻繁に描いていたそうです。
古来「鶴」は長寿を示す吉祥図案としてよく画題とされてきました。画中の「松影迎福」「松寿千年」という言葉も常緑樹の松葉が千年という長い歳月を経ても風雪に耐えその色を変えることのない長寿を表すものとして記されており、本作は吉祥づくしのおめでたい作品となっています。 (県立美術館学芸課 松川綾子)
【鹿角抄(コラム)】 奈良時代のたくましさ 「端正」「典雅」「剛勁」
古都・奈良のランドマークである興福寺五重塔(国宝)。見慣れた姿だが、1月のある朝、凛とした空気の中で、木組みの美しさ、力強さに改めて見とれてしまった。奈良時代に創建されて以降、焼失、再建を繰り返しながら当初の精神を伝えているわけだが、現代で今後千年も継承される建造物はあるだろうか。
ここ最近、1世紀ぶりの解体修理が進む薬師寺東塔(国宝)、発掘調査が行われた東大寺東塔跡と、塔に関する取材が続いた。薬師寺東塔はこれまで大小の屋根が重なる華麗な姿に目を奪われてきた。今は失われた七重の東大寺東塔で驚くのは何と言っても100㍍に至ったともされる高さだ。古代の寺院でこうした塔が相次いで建てられたのはなぜなのだろう。しかも五重、七重と高く積み重ねられたわけは…。
仏塔は本来は舎利(釈迦の遺骨)を納めた墓とされる。聖なる寺院の象徴的な建造物となるのだが、現存する塔を眺めていると、「美しく造りたい」「技を見せつけてやろう」、さらには「天と地をつなぎたい」といった希求が伝わってくるような気がする。
奈良時代は塔に限らず、東大寺大仏殿(国宝)や興福寺中金堂など巨大建造物が建てられ、荘厳な仏像が祭られた。それらから思うのは当時の人たちの祈り、そしてエネルギー、たくましさだ。先進国、唐(中国)の情報が入る一方、飢饉や災害も相次ぐ中、宗教文化を中心に国力を高めようとした渇望を感じる。
東大寺二月堂の修二会(お水取り)や法隆寺の修正会など国家の安泰や人々の幸福を祈る行が始まったのも当時だ。カリスマ僧侶も登場した。行基は庶民のために架橋、治水を行い、説法をして回った。そんな精神力が育まれた平城京は海外から人と文物が入ってきた刺激的な国際都市だった。だが、今のような機械もライフラインもなかった。それなのに千年後に残るものを築けたのだ。
奈良・天平の時代精神を多川俊映・興福寺貫首は、「端正」「典雅」「剛勁」という3つの言葉で言い表す。千年後、今の時代はどう表されるのだろう。 (岩口利一)
【祈りの美 ⑤】 清水公照 甕 羅漢之図 「煩悩にかられた人間の姿を重ね合わせて…」
昭和50(1975)年、華厳宗管長・東大寺第207世別当に就任した作者は大仏殿昭和大修理(大屋根の瓦の葺き替え工事)のため全国を奔走しました。こうした中、時間を見つけては各地の焼物の産地に立ち寄り、地元の土や釉薬を用いて窯元で焼く作業は楽しみの一つでもありました。
「泥仏」に始まり、地元の陶芸家が制作した器に絵付けをしたり、手びねりによる成形にも挑戦しています。西日本を中心に約100件にものぼる大小さまざまな窯元で制作された作品には各地の焼物の特徴が感じられると同時に、書画で見せる作者独自の世界観も表現されています。
本作は武骨な風貌の羅漢を絶妙なバランスで胴部に配した大甕です。羅漢とは悟りを得た修行者のことですが、作者はしかめ面の羅漢に煩悩にかられた人間の姿を重ね合わせて描き、何ものにもとらわれない悟りの境地を説きました。
成形・焼成した陶芸家の奥田英山は昭和19(1944)年、滋賀県信楽町(現・甲賀市)生まれ。茶陶を中心に制作し、清水公照に師事しました。信楽の土の味を生かした作風に特徴があります。 (奈良県立美術館学芸課 松川綾子)
【あっ、これ食べたい!】 chocolaterie&cafe TRICO ならまち店

2階のカフェで味わえるショコラセット
奈良市薬師堂町のならまちにある「chocolaterie&cafe TRICO ならまち店」。ショコラティエが一粒一粒思いを込めて作るショコラはまさに芸術品で、訪れる価値は十分にある。
2階のカフェスペースで人気の「ショコラセット」は、好みの「ならまち猪口齢糖(ボンボンショコラ)」3つに日替わりのプティフル(小さな菓子)、ドリンクが付く。
「プティフルを先に食べ、その後ならまち猪口齢糖を食べてみて」とオーナーの小西雄大さん(39)。「18度くらいの温度で食べるのが一番オススメ」だからと言う。ショコラに合うようブレンドされたコーヒーも相性抜群だ。
選んだ「シチリア産ピスタチオ」は、中のガナッシュに最高品質のシチリア島ブロンテ村産ピスタチオペーストを使用している。食べると中から香りが広がる。
フランス、ベルギーだけでなくさまざまな国のチョコレートを使い、素材をより活かすため外側のコーティングの厚さも変えている。妥協を許さないショコラティエのショコラ、本命にはもちろん、自分のご褒美チョコにぜひお薦めです。 (朋)
【住所】奈良市薬師堂町20-2
【連絡先】☎0742・25・2788
【ホームページ】http://trico-az.com/
【営業時間】午前11時~午後6時
【定休日】不定休
【メニュー】カフェメニューはショコラセット(1200円)、ケーキセット(1200円)など。持ち帰りのならまち猪口齢糖(ボンボンショコラ)は、シチリア産ピスタチオ(320円)、生駒産はちみつ(308円)、春鹿ショコラ(302円)、フランス栗(308円)、自家製オランジェット(308円)など。他に生チョコレート(40粒入り1380円)も。
【祈りの美 ④】 清水公照 書「自分にな」 人柄、人生観わかる作品
作者にとって書は創作活動以前に宗教家として必要とされる素養の一つでしたが、本格的に書を学んだのは応召でわたった中国で漢字の文化に肌で触れたことがきっかけだったそうです。中国・唐時代の書家の作品を手本に楷書体や草書体を学び、寺門の扁額や茶掛けにとさまざまな書体を重ねるうちに、おおらかで奔放ともいえる独自の書風を身につけてゆきました。
「自分にな 一、なまけるな 一、おこるな 一、いばるな 一、あせるな 一、くさるな 一、おごるな 右條々自戒自守 別当公照」
と柔らかな文字を書き連ねた本作は「泥仏放語百カ条」と題した作者の100の信条を締めくくる自戒の言葉を表したものです。もともと依頼により書いた6カ条に押しつけがましく感じられたため、「自分にな」という表題を付けてできたといいます。「昭和の良寛」と親しまれた作者のあたたかな人柄とともにおおらかな人生観が読み取れる作品です。 (県立美術館学芸課 松川綾子)
【センバツ】 連覇を狙う智弁学園、23年ぶりの高田商 ともに頑張れ!
第89回選抜高校野球大会の選考委員会が開かれた27日、奈良県内からは智弁学園(五條市)の2年連続11回目の出場と高田商(大和高田市)の23年ぶり3回目の出場が決まった。大会は3月19日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する。

連覇に向け、気合十分の智弁学園の選手
智弁学園には午後3時半ごろ、選考委から出場決定を伝える電話が。手塚彰校長(54)は「ありがたくお受けいたします」と答えた後、野球場に集まった選手らに「甲子園で頑張って」と激励した。
昨年の選抜大会では初優勝を果たし、今大会は連覇がかかっている。昨秋の近畿地区大会は県予選では優勝したものの、本大会では準々決勝で大阪桐蔭(大阪府)に敗れ、ベスト8にとどまった。
小坂将商監督(39)は「秋季大会で、上には上がいることがわかった。打力と走力を売りに、ひとつひとつ上を目指したい」。福元悠真主将(17)は「攻めの気持ちで連覇を目指したい」と力を込め、「バッティングがチームの持ち味なので、主将としては打撃でチームを引っ張りたい」と意気込みを語った。

帽子を投げて喜びを爆発させる高田商の選手
高田商に23年ぶりの吉報を知らせる電話が鳴ったのは午後3時半ごろ。桜井重宏校長(60)は選考委から出場決定を知らされると、「謹んでお受け致します」と答え、グラウンドに集まった選手に「高校生らしい全力プレーを期待する。これからも練習頑張って」とエールを送った。
高田商は昨秋の県大会決勝で智弁学園に惜敗したが、エースの古川響輝投手(17)を中心とした守りと、県大会6試合で23盗塁を記録した機動力で準優勝。近畿地区大会ではベスト8の戦績を残した。昨年まで横浜DeNAベイスターズでプレーした三浦大輔さん(43)の母校でもある。
赤坂誠治監督(40)は「冬に鍛えた打撃がどれだけ通用するかを試すいい機会」と気合十分。4番の大久保拓海主将(17)も「甲子園では高田商の走塁と元気な野球を見てほしい」と意気込んだ。
【県立美術館企画展 祈りの美 ③】 清水公照 麗人
飛天や麗人といった独特の女神像も作者の作品におなじみのモチーフです。鮮やかな衣装をまとって宙を舞い、微笑みを浮かべるその風貌は愛嬌たっぷりですが、そのかたわらには「華厳経」や「阿弥陀経」などの経文や人生を歌った「いろは歌」、自然界を賛美する漢詩などの文字や詩句が添えられています。
作者はしばしば「華で飾られた仏の教え」とされる「華厳経」を世界や人生にたとえ、作品には常に華厳の教えにもとづく独自の世界観が表現されています。とりどりの色彩で描かれた女神たちは仏の化身となってその教えを体現しながら、書画一体となった作者の表現世界に彩りを添えています。
画中の漢詩は、中国・唐時代の詩人・盧照鄰(ろしょうりん)による「長安古意」の一文です。唐の都・長安の繁栄を詠んだ歌ですが、その真意は世の無常をよそに孤高の生活を送る人々を讃えることにあります。花の精のような麗人たちが一時の栄華を象徴しているかのようです。 (県立美術館学芸課 松川綾子)
【県立美術館企画展 祈りの美 ②】清水公照 泥仏(どろぼとけ) 釈迦十大弟子(しゃかじゅうだいでし)のうち 優波離(うばり)
宗教家である清水公照が創作活動を展開するきっかけとなったのが、「泥仏」と称する焼物の人形作りです。作者は52歳の時に東大寺幼稚園の園長を務めることになりますが、そこで園児たちが自由に紙粘土で遊んでいるのを目にし、その躍動感溢れる表現に触発されて、自らも陶土を使った手びねりによる人形作りを始めました。
幼少期に見た五百羅漢(らかん)やインドの人々の風貌などの記憶を頼りに制作したという泥仏は、「仏」とはいうものの表情豊かで人間味溢れる姿・形をしています。作者は、「泥仏を作る時間はどろどろの泥をはく時間だった」と語っていますが、泥仏作りは自身の内面と向き合う日課となってゆきました。
本作は釈迦の10人の高弟のうちの1人「優波離」を象ったもの。生涯1万点あまりもの作品を生み出したという泥仏は、作者の自画像であると同時に、作者の関わったさまざまな人々の姿が投影されています。 (県立美術館学芸課 松川綾子)
【教育】奈良の魅力を発信! 奈良女子大付小児童がパズルや広告作成に挑戦

アイデアを出し合う児童
電車の広告、フリーペーパー、テレビ…さまざまな媒体を使って「奈良の魅力を発信しよう」というプロジェクトが小学校で進行中だ。取り組んでいるのは奈良女子大付属小(奈良市)6年星組の児童。昨年は内閣府の政策アイデアコンテストで小学生では初めて地方予選を通過するなど大奮闘した。3月の卒業までに成果を形にしようと、懸命の取り組みが続いている。
「広告の余白がもったいないと思う」「住所も載せなあかんのちゃう?」。今月中旬、同校では6年星組の児童37人が複数のグループに分かれ、活発に意見を出し合っていた。
このクラスでは昨年4月から総合学習の時間を使い、「奈良の魅力発信プロジェクト」に取り組んでいる。奈良の良さを県内外に発信することがテーマで、目指すのは観光客を増やすことと、県民に奈良に住み続けたいと思ってもらうことだ。
「奈良が好きな人」。担任の中垣州代教諭(45)が4月にそう尋ねたとき、手を挙げた児童は2、3人しかいなかったという。「いいところが思い浮かばない」「大阪みたいなテーマパークがなくてしょぼい」。そんな意見が多かった。だが、今、子供たちは生き生きと奈良を語る。
「お寺しかない」と思っていたという田中生萌(いくも)さん(12)は、「自然と歴史こそが魅力。吉野は日本一の桜の名所だとか、いろんな奈良を説明できるようになった」という。他の児童も、「PR不足で県外の人には知られていないけど、十津川村の谷瀬の吊り橋はどきどきしながら渡るのが楽しい」「県南部は春は桜、秋は紅葉を眺めながら食事ができるいい場所がある」と教えてくれた。
■アイデアは鉄道会社などへ売り込み
プロジェクトはフィールドワークを重視して進められている。県や旅行会社への取材のほか、昨年9月には東京合宿を実施。県選出の高

魅力発信のツール、クロスワードパズル
市早苗総務相に地方創生の話を聞き、外国人や日本人計約200人への路上インタビューにも挑戦した。
その結果、「奈良市外の名所が知られていない」との問題が浮き彫りとなり、県南部・東部の秘境をめぐるツアーや奈良の写真コンテストなど、いくつかの企画を提案。昨年、内閣府地方創生推進室の「地方創生政策アイデアコンテスト」に応募し、小学生では初めて地方予選を通過する快挙を成し遂げた。
最終審査には残ることができなかったため、今年に入り、アイデアの練り直しを決意。新たな企画をさまざまな媒体を使って発信することを目標に据えた。
たとえば、奈良の名所や特産品が答えになるクロスワードパズル。既存のフリーペーパーへの掲載を考えている。企画チームの遊田梨々華さん(12)は、「答えには難しいものを選んだ。答えが何かをインターネットで調べることで、それがどんな名所や食べ物なのか、詳しく知ってもらえると思う」と話す。
他のチームでは外国人観光客向けの交通アクセスの紹介動画作成や、電車の中吊り広告のデザインなどに取り組んでいる。
アイデアは1月中に完成させ、自分たちで鉄道会社やフリーペーパーの発行元など各所に売り込みに行く予定だ。中垣教諭は、「卒業までに何らかの形にしたい。奈良のために一生懸命になっている子供たちの思いが届けばうれしい」と話した。
【県立美術館企画展 祈りの美 ①】 清水公照 紅富士(べにふじ)

清水公照(しみず・こうしょう 1911~1999)は、東大寺別当(住職)を務め、その温かい人柄から「昭和の良寛」と親しまれた宗教家ですが、一方で、独特の味わいを持つ書画、陶芸を制作したことでも知られています。
本作は、青雲たなびく赤富士に「和風被八方(和風八方に被う)」(のどかな風が国の八方へ吹きあまねく及ぶ)という一文を記したもの。天下泰平の世を祝う晴れやかな気分に満ちた作品です。力強く大胆な画面からは、手近に筆がなければバケツの墨と雑巾の筆で描いたという豪快な創作態度もうかがえます。赤富士は、富士山が朝日に染まって起こる現象で、一般に縁起の良い事とされており、古くから画題とされてきました。 (県立美術館学芸課 松川綾子)
「祈りの美~清水公照、平山郁夫、杉本健吉…」は、奈良にゆかりの深い3人の作家の作品を展示し、三者三様の表現世界を鑑賞していただくと同時に、作品の根底に流れる祈りの心や奈良の歴史・文化の魅力を感じ取っていただこうという企画展です。いくつかの作品を順次紹介します。3月15日(水)まで開催中。
【あっ、これ食べたい!】 毎朝、新鮮なきのこを直送 驚き何度も… きのこ料理店「創士庵」

コース料理に使われるきのこ
奈良県生駒市真弓にあるきのこ料理店「創士庵(そうしあん)」では、15種類ほどのきのこを使った料理がコース仕立てで楽しめる。
人気の「花コース」は「キヌガサタケのかさを纏った焼売」、ピンク色のトキイロヒラタケなどを使った「きのこの刺身とエリンギのローストビーフ巻き」、ヤマブシタケやアワビタケの「きのこの天麩羅ウニのクリームソース」、ポルチーニと鴨で出汁を取った「きのこ鍋」に、おかわりができる「マイタケ御飯」。デザートと抹茶も付く。
「日本で1人しか栽培していない珍しいきのこもある。毎朝新鮮なきのこを直送してもらっています」と、〝きのこ愛〟あふれるオーナーの西野由紀子さん(45)は自信満々で話す。
コース中は、使ったきのこを別に盛りつけて説明してくれる。なじみ深い「エノキ」も茶色でとても大きく、びっくりした。クラゲのような不思議な形のものもあり、種類の多さに何度も驚いた。
いずれも最高級のものが使われ、噛み応えのある食感を楽しめる。店内はガラス工芸の照明やステンドグラスで彩られ、落ち着いた雰囲気でゆったりくつろぐこともでき、お薦めです。 (朋)

(上から時計回りに)マイタケ御飯、きのこ鍋、焼売、きのこの刺身
【住所】生駒市真弓2―4―21
【連絡先】☎0743・78・5953
【ホームページ】http://www.sousian.com/
【営業時間】午前11時~午後3時(ラストオーダー午後2時)と午後5時半~午後10時(ラストオーダー午後8時半)
【定休日】月曜日(祝日の場合は営業)
【メニュー】花コース(2800円)、風コース(3800円)、月コース(4500円)、ランチステーキコース(3000円)、ディナーステーキコース(3620円)など。
※全て税抜き価格
【交通安全】 便利さよりも安全を確保した国道369号 ポール設置で事故ゼロを確保

ポールが設置された現場。事故がゼロになった
奈良市中心部を東西に走る「大宮通り」(国道369号)。道路沿いの北側に立つ大型商業施設「イトーヨーカドー奈良店」前はかつて、奈良県内の交通事故発生件数ワースト3位の〝危険箇所〟だった。だが、死亡事故を機に住民と警察が県に働きかけ、無理な横断を防ぐポールを設置。その後事故はゼロとなり、安全な道路へと生まれ変わった。
□最悪の事故発生地
現場の道路は片側2車線。店の東側を流れる川沿いの道路との結束部分では中央分離帯が途切れており、無理な横断をする車が後を絶たなかった。店の前に歩道橋はあるが、道路を横断できる信号は約100~200㍍先と少し離れているため、車の合間をぬって横断を試みる買い物客も多かったという。
約150㍍東に市役所があり、車だけでなく通行人も多い付近では平成24年~28年の5年間で、死亡事故1件、人身事故33件を含む76件の交通事故が発生した。これは県下ワースト3位、管轄する奈良署では最悪の事故件数現場だった。
奈良署は防止策をとりたかったが、横断を防ぐポールを設置するには、地元住民や県土木事務所の同意が必要だった。大宮地区自治連合会長の吉岡正志さん(80)は「『危険だ』という声もあったが、『便利だからそのままにしておいてほしい』という声も根強かった」と明かす。
□ついに死亡事故発生
住民と警察の協議が平行線をたどっていた昨年2月、ついに死亡事故が発生した。道路を横断しようとした歩行者と、車の接触事故だった。
「一刻も早く対策をとらなければ」と、警察は現場でこれまで起きた交通事故について、自治会や地元住民に説明。中央分離帯が途切れた部分が原因だった事故について詳細を聞いた吉岡さんは、「昔から危険だという認識はあったが、事故の数や状況を目の当たりにすると、対策をとるしかないと思った」と、5月には自治会としてポール設置の要望書を県土木事務所に提出。8月には、約40㍍の全区間でポール設置が完了した。

ポールが設置される前の国道369号
□便利さよりも安全確保
設置から5カ月が経過した現在、付近での交通事故はゼロ。通勤時間帯に「抜け道」として利用していた他府県ナンバーの車もみられなくなった。「この地区は高齢者も子供も多く、便利さよりも安全を確保したいと思った。安全が保たれてよかった」と吉岡さん。奈良署の松田健嗣・交通1課長は「自治会の協力がなければできなかったこと。今後もあらゆる面で綿密な関係を築きたい」と話した。
【ハーボニー偽造】 奈良県が県内全薬局に注意喚起 「患者の前で確認を」

C型肝炎治療薬ハーボニー(左)と偽薬(真ん中、右)
奈良県内の薬局チェーンでC型肝炎治療薬「ハーボニー」の偽造品が見つかった問題は23日、東京の卸売り販売業者からさらに9ボトルの偽造品が見つかるという新たな展開を迎えた。だが全容解明には至っておらず、奈良県は同日、県内の全処方箋薬局約500店に対し、処方する際はハーボニーのボトルの中身を患者の前で開封確認することなどを求める通知を出した。
13日に奈良県内で偽造品が見つかって以降、奈良県は偽造品が見つかった薬局チェーン「関西メディコ」(平群町)が展開する「サン薬局」全59店舗を調査した。結果、現在同社が保有している15ボトルはすべて正規品であることが確認された。
奈良県によると、同社は以前はハーボニー製造販売元の「ギリアド・サイエンシズ」(東京)が直接取引する卸売業者からのみ購入していたが、昨年5月からは東京や大阪の卸売業者計4社からも仕入れを開始した。厚労省の調査では、この4社もそれぞれ東京の複数の卸売業者からハーボニーを仕入れており、このうちの2社から新たに計9ボトルの偽造品が見つかった。
奈良県は今後、調査範囲を県内全処方箋薬局に拡大し、偽造品の有無や流通経路の確認をする方針だ。
関西メディコは、「仕入れ先は卸売り販売業の許可をもった会社だったので信用していた。二度と同じようなことがないよう、処方の際は十分注意する」と話した。
【バンビシャス通信】 〈選手丸はだか〉 身長190㌢、チームの元気印 本多純平選手(28)

身長190㌢の本多純平選手。一般人とは頭一つ抜け出している
奈良の地で4年目のシーズンを戦っている。試合中の苦しい時間に声を出し、チームを鼓舞するムードメーカー。昨季はキャプテンとしてチームを率いた。
バスケは中学から始めた。抜群のスタミナを持ち、外国籍選手にも当たり負けしない体格で、ディフェンス能力には定評。オフェンスでは果敢にリング下に切れ込み得点を狙う。
ラジコンが最近の趣味。作っている時間が楽しいという。オフシーズンには友人と野外で走らせて遊んでいる。
190㌢の長身のため、たまにドアの上に頭をぶつけることもあるが満員電車に乗ると「高くってよかった」と実感。私服はサイズがないのが悩み。XL以上のサイズがあるブランドから探す。ファッションのポイントは帽子。何種類も持っており、外出するときは必ずかぶる。
この日はダウンジャケットに丈の短いジーンズとスニーカーをあわせた。「足元が寒くないか」の質問には「大丈夫」とさわやかな笑顔をみせた。バンビシャスの元気印、シーズン後半戦の活躍に期待したい。 (バンビシャス広報 和田真智子)
本多純平(ほんだ・じゅんぺい) 1988年12月7日生まれ、富山県出身。身長190㌢。

華麗なジャンプシュートを決める本多選手
◇
選手の素顔に迫る「選手丸はだか」。随時掲載します。
【障害児支援】 平群の中野康子さん(68)、ひとりで支援団体「ひとつぶのたね」を設立

「ひとつぶのたね」を立ち上げた中野康子さん(右)と娘の弥生さん
障害のある子供や家族の力になりたい。そんな思いから、支援団体を1人で設立した女性がいる。奈良県平群町の主婦、中野康子さん(68)。知的障害がある長女・弥生さん(38)を育てた経験から、「若いお母さんの支えになれたら」と立ち上がった。「同じ立場の人が思いを分かち合い、共にできることを考えたい」と話している。
□「仲間がいれば助けに」
木材の色合いと香りが心地よい空間に、陽光が燦々(さんさん)と降り注ぐ。住宅街の一角に建つ木造2階建ての家は、中野さんが設立した支援団体「ひとつぶのたね」の活動拠点として、自宅の隣に新築したものだ。
目指すのは、「障害児を持つ親が集って育児の情報交換ができる場」。昨年10月に開所以来、平日の日中は常時開放している。少しずつ来訪者も増え、中野さんが育児や就労に関する相談に応じている。
家族や自身の貯金など約5千万円を投じてまで支援団体を設立したのは、次女(32)の子供が通う幼稚園で、発達障害の子供を育てる母親と出会ったのがきっかけ。障害を持つ子供の子育てに悩みながら懸命に取り組む姿がかつての自分と重なり、「力になりたい」と思ったという。
中野さんが弥生さんを出産したのは29歳の時。3020㌘と大きかったが、酸欠で顔が青く、すぐに保育器に入れられた。1歳を過ぎたころ、突発性発疹による高熱を発症。ひきつけも起こした。
歩き始めが遅いため病院を受診すると、左脳にかすかな損傷があるため、運動障害が出ていると診断された。7歳の時、障害者手帳を受け取った。
「希望を持ってはだめ」と医師に言われ、「切り捨てられた気持ち」を味わったこともある。だが弥生さんは元気に成長し、地元の小中、養護学校を卒業。現在は大阪府大東市にある事業所に週5日間通い、内職や農作業にと頑張っている。
子育ての傍ら、銀行勤めに自宅での父親の介護と、多忙な日々を送ってきた中野さん。折に触れ感じていた「しんどい時に『自分は一人じゃない』と思える仲間がいれば、どれほど助けになるか」との思いも、支援団体設立の原動力となった。
家の建設は一昨年8月に開始。内装には自然素材を用い、明るい空間づくりにこだわった。完成間近の昨年7月には、神奈川県相模原市の障害者施設で入所者19人が刺殺される事件が発生。「障害者はいなくなればいい」と供述した容疑者に怒りと悲しみがこみ上げた。「人間はみな必ず老いて病気になり、けがもする。目や耳が悪くなったりし、誰もがいつか心身に不自由や障害を持つ。そんな想像力を持てば、他者にもっと優しくできるはず」
たった1人で団体を立ち上げてから約3カ月。近ごろは来訪者だけでなく、埼玉など遠方から障害児の育児相談も電話で受けるようになった。「新たな出会いを通じ、団体がこれからどんな花を咲かせていけるか楽しみ」と中野さん。今後は団体の法人格取得を目指し、障害者の就労支援につながる取り組みも進めていきたいという。
家は平群町初香台で月~金曜の午前9時~午後5時と、土曜午前9時~午後3時に開所。問い合わせは、中野さん(☎0745・47・1510)。
【あっ、これ食べたい!】 自家製酵母、人気の豚マ~ン ピザリアニューエイジ 北生駒店

自家製酵母を使った豚マン
奈良県生駒市上町にある「ピザリアニューエイジ 北生駒店」の冬季限定「豚マン」は人気商品で、昼ごろには売切れることも多い。皮は自家製酵母を使って長時間発酵させたほんのり甘い生地。中の具材は国産の豚肉、筍、シイタケなどを使ったこだわりの一品だ。
「おいしさはもちろん、安心できる安全な物にこだわっています。現地まで足を運び、考え方の合う農家さんと契約しています」と常務取締役の東山琢也さん(36)はいう。卵や調味料、契約農家特別栽培の野菜なども販売している。
卵と乳製品を除去したアレルゲン対応商品は、「アレルギーのない人も食べたくなるよう、味にもこだわった」(東山さん)。かわいい動物の形のパンやジャムパンなどもあり、取材中もどんどん売れていた。
製造と販売スタッフの多くは栄養士なので、アレルギー対応などの相談も気軽にできる。パンの中に入れるフィリングも手作りなので、素材に何を使っているのかも分かるから安心だ。
パン屋なのに、「バラ寿司」まで手作りしているお店。興味深い商品が盛りだくさんで、お薦めです。 (朋)

アレルゲン対応の動物パンとカメロンパン
【住所】生駒市上町4143-1
【連絡先】☎0743・79・3322
【ホームページ】http://www.jfs.co.jp
【営業時間】午前9時半~午後6時半
【定休日】日曜と月曜
【メニュー】豚マン(160円)、フルーツロール(150円)、バターロール(110円)、スウィートポテト(170円)、動物パン(180円)、カメロンパン(160円)、シュークリーム(140円)、生チョコロールケーキ(260円)、バラ寿司(500円)など
※全て税別
【特典】「あっ、これ食べたい!」の紙面の切り抜きを持参し、パンを税抜き500円以上購入するとバターロール1個プレゼント。1月31日まで
【鹿角抄(コラム)】 心惹かれる奈良文化 出不精だけど…もっとどっぷりつかりたい
昨年は就職に人生初の一人暮らしに、と変化に富んだ1年だった。仕事で運転することも多く、奈良という土地にも慣れてきたように感じる。
そこでふと、プライベートで「奈良らしいこと」を体験しているだろうかと思い返してみた。「正倉院展の鑑賞」や「東大寺、春日大社への参拝」…。あれ、思っていたよりも奈良を堪能していないと気がつく。赴任当初は寺社巡りや御朱印集めができると意気込んでいたのだが、いかんせん出不精がたたった。何とももったいない8カ月間を過ごしたものだと後悔している。
年末、紙面の企画で茶道の体験をした。もともと興味はあったが、茶道に触れるきっかけもなく、全くの初体験。教室ではまず、正座に苦戦した。実家に畳はあるが、正座をする機会はなく、たったの15分ほどで足がしびれてしまった。しかし、正座をするだけで、姿勢を正し、背筋を伸ばそうという気持ちになった。
ひとつひとつの作法を教えていただきながらお菓子を食べ、お茶をいただく。茶碗を動かす動作ひとつをとっても細かく決まっていることに驚いた。記者はたどたどしい動きしかできなかったが、教室に通う生徒の方々は非常になめらかで指の先まで美しく、つい見ほれてしまう所作だった。
体験では薄茶だけでなく、濃い茶もいただいた。濃い茶は溶かしたチョコレートのようにとろみがあり、「飲み物」ではない初めての感覚だった。茶道では、濃い茶は「飲む」ではなく「喫する」という言葉を使うのだという。指導してもらった堂後宗邑教授(49)は、「口に入れて味わうことを意味し、喫茶の語源は茶道にある。茶を味わう文化は昔から奈良に根付いていた」という。茶道発祥の地での体験は、想像以上に心ひかれるものだった。
スキルが身につくだけでなく、その所作や長く続く文化が心を穏やかにしてくれる茶道。奈良にいる間に奈良らしい文化を習い初めてみるのもいいかもしれない、と今前向きに検討中だ。 (石橋明日佳)
【カフェ】 寂れた神社 女性宮司が再興 境内で憩える 御所・葛木御歳神社

東川優子宮司
奈良県御所市の葛木御歳(みとし)神社の境内にあるイタリアンカフェ「みとしの森」が市民や全国の神社好きの交流の場となっている。運営と料理を1人でこなすのは、同神社の女性宮司だ。ひょんな縁から継ぐことになったのは、人の手が入らずにすっかり寂れてしまった神社。再興から神社カフェの開店まで、たった1人で始めたチャレンジは多くの人を巻き込み、進化を続ける。
■ぼろぼろの神社
壊れたままの拝殿の階段、板が外れて中が丸見えの摂社、屋根が落ちた社務所。同神社の宮司、東川(うのかわ)優子さん(54)は初めて神社を訪れたとき、その寂れた様子に驚いたという。
同神社は「神代の創祀」とされ、稲の神様「御歳神」をまつる全国の神社の総本社という格式高い神社。だが、当時の宮司は公務員の仕事が主で、跡を継ぐ人もなく、手入れが行き届かない状態が長く続いていた。
東川さんはそれまで、塾経営や家庭教師の仕事に奔走していた。だが、不景気のあおりで順調だった事業が行き詰まった平成16年春、心身ともに追い詰められた東川さんの足はなぜか、それまでまったく心に留めたこともなかった神社へと向かった。
寂れた雰囲気の漂う参道を抜け、導かれるように境内の奥に入ったときのことはよく覚えている。「神様に『よくきたな』といわれているような、ウェルカムな感じがした。一筋の光に思えました」
■ボランティアの輪
「神社を継ごう」。不思議な縁が結ばれた気がして、その場で決意した。幸い宮司の理解があり、許可を得て神道を猛勉強した。「おもしろくておもしろくて、急激にはまった」といい、同年夏には神職の資格を取得した。そして、すぐに神社の改修に取りかかった。
「水が流れれば血液がめぐるように神社が変わるのでは」と思い、まずは手水舎の新設を計画。だが、人手も資金もない。思いついたのがインターネットの活用だった。
神社のホームページを開設、神社が好きな人が集まる掲示板に「手水がなくて困っている」と書き込んだ。すぐに神戸の男性から返信があり、5~6人の仲間と駆けつけてくれたという。ボランティアの輪はこれを機に広がり、支援の申し出や寄付が全国から舞い込んだ。
21年に前宮司の引退で宮司に就任。「きれいになるのを神様が待ったはる」とボランティアと作業に打ち込み、拝殿の階段や摂社の修復からぼろぼろだった瑞垣や御簾の新調まで、神社の再興に情熱を傾けた。
25年にすべての工事が終了した。「まさに平成の大改修。神様に本当にいろんな人とのご縁を結んでもらった」と振り返る。
■神社カフェで交流
26年末、次の目標としてひらめいたのが「神社カフェ」だった。境内には倉庫に使っている広い部屋がある。周辺には飲食店がなく、地域住民や遠方からの参拝者が集う場になることが予想できた。
思い立ったが吉日、と27年1月からネットのクラウドファンディングで開店資金を募り、同6月「サロン&カフェ みとしの森」をオープンした。カフェでは地元食材にこだわったイタリアンのランチやケーキを提供。運営から料理まで、すべて東川さんがこなす。音楽会や神道講座などのイベントも開催しており、東京や大阪など県外からの参拝者や、「おもしろい女性宮司がいる」と聞きつけてやってくる東川さんのファンも多いという。
東川さんは走り続ける。「これからはイベントやツアーを通して『神社ってこんな場所だよ』というのを知ってもらい、盛り上げる活動を広げていきたい」。

境内にある「サロン&カフェ みとしの森」
「サロン&カフェ みとしの森」は午前時~午後4時。月・火・水曜定休。詳細はみとしの森ホームページ(http://mitoshinomori.com/)。予約、問い合わせは☎(0745・66・1708)。
【事件】 コンビニ強盗の映像公開 アディダスの赤ジャージ男

防犯カメラに映った犯人の男
奈良市六条西のコンビニエンスストア「ファミリーマート奈良六条西店」で今月5日に発生した強盗未遂事件で県警は12日、店内の防犯カメラに映っていた犯人の男の画像を公開した。赤色ジャージー上着に黒いニット帽と白いマスクを着用し、金づちを持っている。情報提供は奈良署(☎0742・20・0110)。
【ならの伝統】 柄の原料、カシ不足深刻 古武道「宝蔵院流槍術」のピンチ救え

宝蔵院流槍術の演武を披露する一箭順三さん(左)
奈良発祥の古武道「宝蔵院流槍術(そうじゅつ)」。約460年の歴史を持つ由緒正しき武道だが、槍の柄の原料であるカシの不足が深刻化し、伝統の継承に黄色信号がともっている。槍に適する長尺で無節のカシを調達できるのはいまや愛知県の製材所1軒のみ。「自分たちで植林するしかない」。伝統を守るべく、槍術の伝習者が立ち上がった。
■460年の伝統
昨年12月10日、奈良県上牧町の山林ではカシの苗の植樹祭が行われていた。平成25年から毎年、ドングリから大切に育ててきた「ハナガカシ」の苗だ。約2500平方㍍の敷地に随時、計1500~2千本を植える予定で、30~50年後に伐採し、槍の柄を製材するという長期計画を立てている。
宝蔵院流槍術は約460年前に興福寺(奈良市)の僧、胤栄(いんえい)が始めたとされる奈良発祥の古武道。現在は奈良を中心に国内外で約100人が鍛錬に励む。特徴は、十文字の穂先が付いた「鎌槍」(長さ2・7㍍)。穂先まで真っすぐ伸びた素槍(同3・6㍍)と対戦する形式で、稽古や演武を行っている。
これまで柄にはシラカシを使用。武道具屋に発注すればなんなく手に入っていたというが、宝蔵院流槍術21世宗家の一箭(いちや)順三さん(68)=奈良市=は「カシが年々不足し、10年くらい前から槍を調達するのが難しくなった」と打ち明ける。
■一流の槍材再興へ
一箭さんによると、柄に適するのは繊維が真っすぐで、節のない長尺のカシ。カシが建材として利用されていた時代は日本全国にカシ林があったが、建材需要が減った影響で年々減少。今では愛知県の製材所1軒だけが槍の受注を請けてくれている状況だ。
カシ以外の木も加工してみた。だが堅すぎてしならずに割れたり、握ったときの滑りが悪かったりと、うまくいかなかったという。
「こんな槍で練習していたら、技術まで変わってしまう」。危機感を抱いた一箭さんたち伝習者は自らカシ林を育てることを決意。せっかくなら江戸時代に槍の一流ブランドとして名をはせた「ハナガカシ」を再興しようと決め、ドングリから育てるべく、平成25年11月、ハナガカシの自生する九州へと向かった。
■50年の壮大な計画
ハナガカシは真っすぐに伸びる性質があり、堅さと弾力性に優れるなど、槍の原料としては最適。だが、木の育成に関して一箭さんたちは素人。そこで県森林技術センターに相談し、アドバイスを受けながら毎年ドングリを植え続け、大切に育ててきた。
そして昨年、ようやく植樹できるまでに苗が成長。シカの食害に遭わない山林を上牧町に見つけ、植樹祭に先立つ同12月1日、同センターとの間で正式に、ハナガカシ育成に関する協定を結んだ。今後50年にわたり、同センターが育成の助言、補助をするというものだ。
同センターの伊藤貴文所長は「奈良にハナガカシは自生しておらず、私たちも育てた経験がない。試行錯誤しながら見守るしかない」としながらも、「歴史ある古武道を将来にわたって支えようという壮大なプロジェクト。関わることができてうれしく誇りに思う」と期待を込めた。

竹筒で育てたハナガカシの苗(一箭さん提供)
奈良宝蔵院流槍術保存会では山林取得などにかかる費用約200万円を目標に募金を呼びかけている。個人は1口5千円、企業法人は1口1万円。申し込み、問い合わせは同保存会(☎0742・44・9124)。
【撮影日記 奈良写真倶楽部】雲海染める朝の光 鳥見山公園展望台から
朝の午前8時前、鳥見山公園(宇陀市榛原)の展望台から雲海を狙って撮影した。白い霧に朝日が映ってほの赤くなっているのが美しい。本当は柿本人麻呂(かきのもとひとまろ)が「東(ひむがし)の 野にかぎろひの 立つ見えて かへり見すれば 月かたぶきぬ」と詠んだ厳寒の日の早朝に東の空にできる朝焼け「かぎろい」を見たかったのだが、もっと気温が下がらないと無理なようだ。 (福岡延雄)
【平成28年12月例会優秀作品】「焼岳」藤森弘(香芝市)▽「朝の光」福岡延雄(桜井市)▽「空中戦」森好央(天理市)▽「瓦アート」出口博司(広陵町)▽「大空を翔る」橋本剛(奈良市)
【あっ、これ食べたい!】 糖度高~い イ・チ・ゴ~ めいとく農園
奈良市山町にある「めいとく農園」のイチゴは第43回農林産物品評会で農林水産大臣賞を受賞するなど、数々の受賞歴をもつ。イチゴといえば春のイメージがあるが、「気温の低い時期の方が、赤く色付くまで日数がかかるので甘みがあります」と代表の山田明徳さん(36)は話す。
めいとく農園では、奈良の育成品種で酸度と糖度の高い「古都華(ことか)」と、大きい果実の「かおり野」、果皮のやわらかい「章姫」を育てている。「やっぱり大きいイチゴが食べ応えもあっておいしいですよ」という山田さんは、他の作物は作らず〝イチゴ一筋〟だ。
採れたての大きな「古都華」を一粒かじってみると、実は硬めでしっかり。果汁が口の中にあふれ出す。
同園は直接販売はしておらず、農産物直売所の「旬の駅ならやま」などで購入できる。中でも「古都華」はファンが多く、入荷後すぐ売り切れることも。納品時間などは収穫状況によって異なるため、各販売所への問い合わせをお薦めします。 (朋)
【販売場所】旬の駅ならやま(奈良市奈良阪町2626-2 ☎0742・22・2930 営業時間午前9時~午後6時)
奈良のうまいものプラザ(奈良市三条本町1-1JR奈良駅構内1階 ☎0742・26・0088 営業時間午前7時~午後9時)
JA特産品アンテナショップ(奈良市今辻子町45-1 ☎0742・24・4657 営業時間午前10時~午後6時で、イチゴは月曜・水曜・金曜のみ)
【メニュー】古都華(1パック700円~)、かおり野(1パック450円~)、章姫(1パック450円~)
【なら正月記 五】 雌雄一体 天焦がす炎 五穀豊穣願い千数百年

炎を上げて燃え上がる茅原のトンド(平成24年、御所市教委提供)
境内の闇に沈む高さ6㍍を超える雌雄一対のトンド(大松明)。灯明の火を受けた火付け役が雄、雌の順に点火すると、各先端のカヤ飾りがパチパチと音をたて、一気に燃え上がる。
役行者の生誕地と伝わる奈良県御所市茅原(ちはら)の吉祥草寺で毎年、1月14日夜に行われる「茅原のトンド」(左義長)。トンドを囲む修験者が唱える般若心経と、境内を埋める住民らの歓声に勢いづけられるように火は燃え盛り、最高潮に達する。
トンドとも呼ばれる「左義長」は全国各地で小正月に行われ、書き初めや正月飾りが焼かれる火祭り行事。茅原のトンドは最大級といわれ、すさまじい迫力だ。千数百年の歴史があり、修験道の開祖として崇められる役行者の生誕地にふさわしい火祭りといえる。
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左義長とは本来、どんな行事なのだろう。
「国史大辞典」などによると、遊びに使われた毬杖という杖を焼いたのが起源らしく、中世以降盛んになった。宮中では書などが焼かれ、左義長、トンドは次第に民間にも広まったという。
「民間のトンドは正月に迎えた歳神様を送り返す行事だが、茅原のトンドは違った意味もあるようです」
御所市教委文化財課技師の金澤雄太さん(30)はこう説明する。
茅原のトンドは全国の左義長の中でも特異な存在で、飛鳥時代に役行者が天下太平や五穀豊穣を願って始めたといわれる。文武天皇が病気になった際、吉祥草寺で祈願すると治ったため法要を営んだのが起源とする伝説も。修験道の「採燈護摩」や仏教の正月行事「修正会」が影響し、豪壮な火祭り行事になったと考えられるという。
トンドが雌雄一対になっているのも全国的に珍しく、金澤さんは「雌雄のトンドが燃える速さを競い、1年の豊凶を占う年占いの要素もある。一般的な神送りの祭りではない複雑な様相が見られる」と指摘する。
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茅原のトンドを見に行くと、トンドが朝顔の花のように上に向かって広がる形をしているのも目を引く。
行事を現在担うのは、地元の茅原、玉手両地区。雄のトンドは玉手区民が、雌は茅原区民が作る。本体を包み込む竹の扇や芯になる柴、ワラやカヤの飾り、本体に巻き付ける鉢巻(しめ縄)を作るため、古来の技術が必要だ。
茅原区長で吉祥草寺左義長大トンド保存会長でもある北谷敦美さん(75)は「トンドをやるには資材集めから始まり、1年がかり。年がら年中、準備している」という。
トンドをたてるための松杭やワラ、カヤ、竹などの調達から始めなければならない。年明け早々の3日には両区の総会で奉納することを確認。6日に両地区の役員が節会の打ち合わせをし、翌日から茅原区の女性たちが浄財集めを行う。
「自分たちの代で途絶えさせることはできない。きちんと後世に伝えないといけない」と北谷さん。
そんな人たちが守ってきた茅原のトンドは、今年で1316回目を数えるという。 (山本岳夫)
茅原のトンド 国の「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択され、県指定無形民俗文化財に指定されている。1月14日午後7時50分ごろ、新賀橋があった場所で地区役員が「手打ち」をした後、行列を組んで吉祥草寺へ。同8時ごろ、寺入り口で再び手打ちをして境内に入り、本堂前で3回目の手打ち式を行った後、本堂に入堂。御符の授与を受け、同8時半ごろに灯明から受けた火で点火する。
「なら正月記」おわり
【なら正月記 四】 もてなしの心 源流で知る わび茶の祖、珠光の境地
茶道といえば、日本文化の代表格。美しい所作にあこがれる一方、縁遠いとも感じてきたが、初釜の時期を控え、奈良町(奈良市)にある「表千家堂後茶道教室」で体験してみた。
「まずは一服どうぞ」。正座をすると、指導役の堂後宗邑・表千家教授(49)にすすめられ、「客」として薄茶をいただくことに。干菓子を食べている間に「亭主」役の生徒が点ててくれる。堂後教授が「茶道はおもてなしと謙譲の心」と話す通り、亭主は茶器一式をふくさで清め、冬は冷えるため茶筅や茶碗を湯で温める。
薄茶を出されると、左隣の人に「お先にちょうだいいたします」、亭主には「お点前をちょうだいいたします」と断ったうえで茶碗を上げ、神仏に感謝の意を示す。茶碗を左手にのせ、右手を軽く添え、時計回りに2度回す。
口の中に苦みが広がるが、ほのかな甘みも。飲み終わると、右手親指と人さし指で軽く飲み口を拭き、手は懐紙でぬぐう。茶碗を今度は反対に回し、正面を亭主側に戻して置いた。
釜で湯が沸く音、茶の香り、茶碗の感触…。ぎこちない自分の作法だが、茶の文化を五感で体験できた。
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実は奈良と茶は縁が深い。
鎌倉時代に西大寺(奈良市)を中興した僧、叡尊が鎮守、八幡神社に供えた茶の残りを振る舞ったという伝承にちなんだ「大茶盛式」を知る人も多いだろう。当時、西大寺や興福寺などは茶園を持ち、室町時代になると寺院では茶を飲み産地を当てる「闘茶」も行われたという。
さらに、「わび茶」の祖とされる室町時代の茶人、珠光は奈良出身だ。茶道は「茶」と「禅」の関係が深まったことにより、「わび」といった文化に広がったとされる。珠光は有名な千利休が活躍する前に「茶禅一味」の境地に至ったとされ、その背景には喫茶文化の先進地だった奈良があったと考えられている。
こうした珠光にちなみ、毎年2月(今年は7~12日)には社寺で「珠光茶会」が催されている。茶の文化の源流が奈良にあることを発信する目的で、仲川げん・奈良市長は「珠光茶会は4回目を迎え、認知されつつある恒例行事となった。観光を盛り上げるイベントとなれば」と期待する。
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表千家堂後茶道教室は、稽古を堅苦しいものではなく、茶の湯を楽しむための立ち居振る舞いを知ってもらう機会としている。そんな稽古に通う生徒は学生からリタイアした人までと、実にさまざまだ。
「ハードルが高いと思っていたが、振る舞ってもらったお茶にひかれた。普段の生活にも所作が生きれば」と、習い始めて間もない野迫川村の長谷川桂二さん(50)。10年のキャリアを持つ奈良市の吉倉英美さん(28)は「日本文化に触れたいと思って始めた。茶道は総合的な芸術のようなもので、さまざまな角度から学び、楽しめる」と、ますます魅力を感じているという。
堂後教授は「茶道の源流とされる奈良で、いくら習っても完成されることのない奥深さや多面性を知ってもらえれば」と語る。
客を思う「もてなしの心」が凝縮された茶道。そんな和の本質こそが心を豊かにしてくれる。 (石橋明日佳)
表千家堂後茶道教室 奈良市内には大森教室(大森町10―1)と高御門教室(高御門町36)がある。主に茶を点てる点前や客作法を学ぶ。茶道には流派ごとの点前、作法があり、口伝で伝えられる。表千家には9つの免状があり、うち7つの免状は稽古年月と稽古実績に応じて師範による取り継ぎが可能で、他2つは家元による伝授のみ。稽古は水曜午後7時~と土曜午後3時~。見学は初回無料。(☎0742・31・3058)。
【鹿角抄(コラム)】 心震える体験探して 「感動した人や場所」を教えてください
「本当に感動したことを伝えるのが一番、人の心に強く訴えかけると思うんです」。先日、取材先から言われた〝当たり前〟の一言は私の心に新鮮な響きを持って刺さった。
先日紙面で紹介したトラベルガイドブック「d design travel 奈良」。東京のデザイン会社が作成したこの本を私はとても気に入っている。読んでいると、奈良の素朴さが美しくていとおしくてたまらなくなるのだ。
特に好きなのが、東大寺の二月堂を紹介したページ。地元の人に「二月堂は朝が最高」と勧められた編集長の空閑(くが)理(おさむ)さん(33)が、奈良滞在時の習慣となった朝の散歩風景を書いている。タイトルは「奈良の光を見る場所」。二月堂に上り切ると見える、朝日に輝く空、雲、山、街。その光景を「奈良時代の創建から刻まれ続ける、毎日、毎時、毎分、毎秒の、〝奈良の日常〟すべてだ」と締めくくっている。
二月堂の紹介はいろんな本で読んだが、これほど私の心を二月堂に駆り立てたものはない。書き手との感動の共鳴がそこにあった。
ふと思い出して、平成21年に千葉総局にいた当時のスクラップブックを引っ張り出し、初めて書いた連載記事「自分時間~移住という選択肢」を懐かしい思いで読んだ。
当時、千葉県館山市の移住体験ツアーに参加した私は、海と土を愛する館山の人と、「人間らしい生活」を渇望する都会からきた参加者に話を聞く中で、心から館山を好きになった。読者に伝えたくて、デスクに頼み込んで書かせてもらった記事はつたなさは隠せないが、われながら館山の人々の熱意や移住希望者の心の痛みが伝わってきて、悪くない。
奈良生活も4カ月目。初心を思い出しながら、心が震える体験を探し歩こう。ぜひ読者の皆様にも「取材してみてほしい感動した人や場所」を教えてほしい。うまく共鳴できれば、きっといい記事が生まれます。 (田中佐和)
【やまと人巡り】将来は「多くの人に来てもらえる牧場に」 辻村優さん(17)
昨年10月に奈良県宇陀市の県農業協同組合宇陀家畜市場で開かれた第49回県乳牛共進会で、農林水産大臣賞を受賞した「DFC レキシコン アニー」号の出品者で県立奈良情報商業高校2年の辻村優さん(17)=御所市。「やったーという感じです」と喜びを爆発させた。
共進会では月齢などでグループ分けされた乳牛の体格や歩く姿などが審査された。
父、崇さん(49)は牧場を経営し、約50頭の乳牛を飼育している。優さんも牛舎の清掃などを担当し、計49頭が出品された今回の共進会ではアニー号を引いて会場を歩いた。
将来の抱負は―。「牧場を継ぎ、多くの人に来てもらえるような牧場にしたいです」 (岳)
【やまと人巡り】気持ち伝えてくれた子供支援 茶谷知伸さん(24)
児童養護施設を退所した若者のための自立援助ホーム「あらんの家」(奈良市芝辻町)に勤務し、今年で4年目を迎える保育士の茶谷知伸さん(24)。児童施設の日常を描く映画「さとにきたらええやん」の上映会(9日開催)をスタッフらと企画した。「貧困や虐待など子供を取り巻く現状を少しでも知ってもらえたら」と話す。
学生時代、児童養護施設の実習で、夢を熱く語る子供の姿に打たれた。「まっすぐな気持ちを伝えてくれた子供がいた。何とかサポートしたいと思った」
「現状がほとんど知られていない」と悩みや課題は多いが、やりがいもある。今は仕事の幅を広げるため社会福祉士の資格取得を目指し、勉強に励んでいる。 (浜)
【やまと人巡り】マガジンに込めた奈良への思い 大浦悦子さん(69)
地域づくりマガジン「さとびごころ(俚志)」を発行する大浦悦子さん(69)=奈良市=は、「100年住みたくなる奈良を目指しています」と話す。
元県職員。行政へのクレーム対応が多く、退職時は「人の相手も奈良もこりごり」と北海道への移住を考えた。だが地域の「がんばっている人」と接するうちに、「おもしろくなって移住し損なった」と笑う。
平成22年に人や取り組みを紹介する雑誌を発刊。古くさいと思っていた奈良の良さを再認識し、タイトルには田舎の意味を持つ「俚(さとび)」を選んだ。「素朴な俚の心に立ち返り、自然を愛し、人とのつながりを大切にしたい」。年4回発行のマガジンには、そんな思いが込められている。 (佐)
【やまと人巡り】石彫作業場建設でインド支援 常盤勝範さん(54)
インドの人たちの支援のため南部のカルカラに石彫作業場を建設し、つくられた石像やレリーフを日本に運び、境内に建立、公開してきた壷阪寺(奈良県高取町)。高さ20㍍の天竺渡来大観音石像など計18体の石像が立ち並ぶ光景は圧巻だ。
住職の常盤勝範さん(54)は「堅い花崗(かこう)岩からやわらかな仏の表情を創意工夫しながらつくってきた。強いものから優しいものが生まれるイメージ。実にうまくできたと思う」と振り返る。
インドとの関わりは昭和40年代からで、交流は半世紀におよぶ。石彫事業は昨年秋の持国天など4体の建立で終結したが、「つくるのはやめますが指導は続ける。これからも支援をお願いします」。 (宮)
【なら正月記 参】花びら餅 旬の素材と華やぎ味わう 萬御菓子誂處「樫舎(かしや)」
白い求肥(餅状の生地)からうっすらと透けて見える金時ニンジンの淡いピンクが、新春の華やぎを漂わせる。甘く煮た素材とみそあんの塩気が絶妙な加減で口の中に広がり、思わず笑みがこぼれそうな幸福感に包まれる。
半月状の見栄えも趣深い「花びら餅」は、新年を祝う伝統的な和菓子。平安時代の宮中の新年行事に由来するとされ、お茶の世界では京都・裏千家の初釜で出されることでも有名だ。
奈良町(奈良市)の「萬御菓子誂處(よろずおんかしあつらえどころ)『樫舎(かしや)』」が作る花びら餅は、もち米の中でも最高級の「近江羽二重糯(はぶたえもち)」と、上品な味わいの「備中白小豆(しろしょうず)」で作った白あんを使用。選び抜いた素材で客をもてなす。
「食感を作るのがわれわれの仕事。きれいな湧き水をそのままお客さまにお出しするといった感じです」と、主人の喜多誠一郎さん(43)。何より素材を大切にして手数を加えず、畑の恵みを直接届けることがモットーという。
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和菓子といえば京都が注目されがちだが、実は奈良も菓子とは縁が深い。吉野が本場の葛菓子を思い浮かべる人も多いだろう。
菓子はそもそも果実を意味したといい、「日本書紀」は、宝来山古墳(奈良市)が御陵とされる垂仁天皇の命で、田道間守(たじまもり)という人物が常世(とこよ)の国から「非時香菓(ときじくのかくのみ)」(橘の実)を持ち帰ったと記載。田道間守は「お菓子の神様」として崇められている。春日大社(奈良市)では古代に伝わった唐菓子「餢飳(ぶと)」が神饌(しんせん)として神に供えられ、そうめんの原型とされる「索餅(さくべい)」も奈良に伝わってきたという。
室町時代には中国(宋)から来日した僧、林浄因が奈良に饅頭を伝えた。饅頭は小麦粉で作った皮に肉を詰めたもので、肉食が禁じられている僧侶のために小豆のあんを入れた饅頭を考案。人々の好みに合い、全国に広まったそうだ。
「当時の日本人の味覚に合う形で取り入れたのは大きな功績でしょう」と、奈良女子大学の高村仁知教授(食物栄養学)はたたえる。奈良市内には林浄因を祭る「林神社」まであり、4月19日には菓子業界の繁栄を祈願する「饅頭まつり」が開かれ、全国から数多くの饅頭が献上。奈良と菓子との縁深さを実感させてくれる瞬間だ。
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正月の花びら餅を見てもそうだが、和菓子の特徴の一つは四季の変化と関係が深いことだろう。春は桜餅やうぐいす餅、夏は柏餅や水ようかん、秋には月見団子や栗饅頭…といったふうに実に豊かだ。
「樫舎」ではクリやユズ、ユリネなどの素材を生かす菓子を提供。喜多さんは「素材を一番おいしい状態で食べてもらえるよう、常に旬に合わせた菓子作りを心がけている」と語る。
店内にはそんな喜多さんの説明に耳を傾けながら菓子を楽しむカウンター席も。取材した日も満席で、横浜市の会社員、安田理絵さん(40)は「菓子作りの様子を直接見ながら食べられ、とびきりおいしい」と満足そうだった。
春夏秋冬、奈良の名店で生まれる菓子の数々。そこには〝旬〟に敏感な日本人の感性が息づいている。 (浜川太一)
樫舎 奈良町の元興寺近くにある和菓子店で、近鉄奈良駅から南東へ徒歩約15分(奈良市中院町22の3)。季節の生菓子などを作っており、春日大社や薬師寺、東大寺、元興寺といった有名社寺にも納めてきた。営業時間は午前9時~午後6時。無休。注文販売が中心で、喫茶も。カウンター席は要予約。問い合わせは(☎0742・22・8899)。日本唯一の「まんじゅうの社」として知られる林神社(同市漢国町6)は近鉄奈良駅から南へ徒歩数分。


































